第30章 私の…嫌いな人。
ふ、と目を開く。
泣きすぎて瞼が重い。あの人が来た後はいつもこうだ。
でもリエーフがいてくれたから今日はいつもより、落ち着いている。目を擦りながら体を起こせば、先ほどまでいたはずのリエーフがいない。
帰ってしまったのだろうか。
それとも愛想を尽かしてしまったのか。
心が不安定で苦しい。
枯れるほど泣いたのにまた涙が溢れる。
『リエーフ…』
「また泣いてる!」
急な大声にびくりと体が震える。開かれたドアから勢いよくリエーフが入ってきた。
「少し目を離すとすぐ泣いちゃうんだから。」
私の近くに寄ると暖かな手を頬に添え、溢れる涙を唇と舌で掬いとった。
『やんっ…くすぐったい。』
「美優さんやっと笑った。」
リエーフが私の目を見つめる。
「俺、美優さんの笑った顔大好きなんです。だから笑って?」
泣きすぎてひどい顔。
それでもリエーフが望むならと口角を上げ笑顔を作る。
『笑えてるかな…私』
「笑えてますよ。」
『リエーフ、ぎゅう。』
私のリクエストに、しゃがんだまま両手を広げるリエーフ。その胸に体を預けると胸に耳を寄せリエーフの心臓の音を聞く。その音が心地よくて背中に手を回し抱きしめるとリエーフは私の体を両手で包み込んだ。
「美優さんお腹空きません?ご飯作ってるんで食べましょう?」
『わかった、けど…服…』
食事を取るのに裸のままじゃあ居心地が悪い。着替えたいんだけど…と小声で言うと今まで優しく笑っていたリエーフが表情を変える。
「そのままでいいじゃないですか。美優さん全部綺麗だからずっと見ていたい。」
リエーフは手を伸ばし胸元を隠す掛け布団を剥がしにかかる。
『リエーフダメだって!』
「なんでですか…?」
『また…したくなっちゃう…から……』
掛け布団を剥ごうとする手が止まる。抵抗の手を緩めるとそのままベッドに倒され強引に唇を奪われた。
激しくて体をとろとろに蕩かすようなキス。
唇が離れた頃にはリエーフに抵抗する気力もなくなっていた。
「…誘わないでくださいよ。ご飯より美優さん食べたくなるから…」
舌舐めずりしたリエーフはいただきますと言うと私に覆い被さり身体中にキスの雨を降らせる。
「美優さんは黙って俺に愛されててください。」
そう言われてしまえば抵抗なんてできないわけで…結局甘やかされながら私はまたリエーフに抱かれた。