第30章 私の…嫌いな人。
「美優さん、頑張ってるんです。この前の文化祭でもクラスのために寝不足になりながらお菓子作ったり、うちの部活に差し入れしてくれたり…いろんなもの作ってみんなを笑顔にしてるんです。だから、否定しないでください。」
『リエーフ…』
嬉しかった。私の味方をしてくれるリエーフが。大好きなリエーフがそう思ってくれてるなら、それでいい。
そう思ったはずなのに…
「それだけか。」
「…え?」
「食なんて腹に入れば一緒だろう。そんなもんで喜んで何になる。」
そうやって自分より下のものを全て切り捨てていく。だから嫌なの。
この人はいつもそう。
空腹を満たすだけ。生命維持のためにしか食という行為を見ていない。
そんな人に私の夢なんてわかりっこない。掴みっぱなしの制服を引くと横に首を振る。
『いいよ…リエーフ。』
「そんな…」
『今までも伝えてきた。それでダメだったんだから今回も無駄だよ…』
私はリエーフにそう伝えると、掴んでいた制服を離す。玄関を数歩進むと目の前に立つ父親に頭を下げた。
『いつも食費生活費カードで支払えるようにしてくれて、ありがとうございます。お金に関して何不自由なく過ごせるのは、お父さんのおかげです。』
再び頭を上げると震える体をピンと立たせ、前を見据えた。
『医師としての貴方は尊敬しています。でも父親としては尊敬の気持ちなんて微塵もない。
私は貴方が嫌いです。』