第28章 音駒高校文化祭2日目!
『で、話って?』
私の作ったスコーンを食べる赤葦を見ながら私は赤葦の横に立った。
「いや、ちゃんと言ってなかったなぁと…美優さん、好きです。貴女が欲しい。」
まあ、今日の雰囲気からなんとなくはわかってはいたけど…赤葦はいい子だけど、気持ちはない。蛍の時に曖昧な返事をして傷つけてしまったから今回はちゃんと断らなきゃ。
『わかってるとは思うけど、私リエーフがいるから…』
「俺、かなりしつこいんですよ。欲しいものは絶対手に入れるタイプなんで…」
そう言う赤葦は不敵な顔をして笑う。赤葦は最後の一口を口に放り込むと私への賛辞を口にし、席を立つ。一歩出遅れた私はお見送りのセリフを言うと、クラスのみんなはやまびこのように決まったセリフを返した。
すたすたと教室を出た赤葦は教室と廊下を隔てるドアの前で立ち止まる。そして後ろを振り返ると私を抱きしめた。
「灰羽が好きなんだったら…俺から逃げてくださいね?美優さん。」
捕まえてみせますからとわたしの目を見つめ嗤う。逃げるように両手で胸を押してもビクともしない。赤葦はさらにエスカレートし、周りから見えないように耳に舌をはわせ私にしか聞こえない声を出した。
「逃がす気はないですが…」
『あ…かあし!』
いつもはバレーボールを送り出す指がニーハイソックスの境界線をなぞる。
『ダメッ!』
どんと胸を強く押すと、赤葦は不意を突かれたようであっけなく私から離れる。
「…いいですね。その、怯えた眼。」
嗚呼、此奴も所詮肉食獣。
静かに近寄り、獰猛に餌を狩る
掴んだ獲物は決して離さない
猛禽類。
赤葦の瞳はソレの眼をしていた。
『それでも私は…逃げ切ってみせる…』
「たのしみです…」
そう言った赤葦は私に背を向けると廊下を歩いて行った。