第2章 これはデートじゃない。買い出しだ。
ドラッグストアでも備品を購入するために歩いていると、籠を持ってついてきたはずのリエーフに制汗剤の通路に引っ張られる。
そのまま通路を進むと女の子らしいファンシーなボトルが立ち並ぶ一角に”それ'はあった。
「これです!俺が使ってるの。」
ゴールドのスプレー口にピンクや緑、紫にオレンジ、水色のカラフルなボトル。先日教えてもらった、リエーフが使っているフレグランスがそこにあった。
「買う時に全部匂い嗅いでみたんですが俺は今使ってるやつが1番好きっす。」
リエーフのお勧めを教えてもらいつつ、私も1つずつ香りを確かめていく。たくさんの香りを嗅いだけれど、一番惹かれたのはやっぱりリエーフと同じボトル。
『やっぱり…青がいいなぁ….』
「これで決定ですか?」
『…うん。これにする。』
試供品を元の位置に戻し、ボトルを籠の中に入れようとするとそれより一瞬早くリエーフの手がボトルを掴む。
「プレゼントさせてください。」
『いいよ。自分で買うから。』
「お弁当のお礼っす!」
そう言ってリエーフはフレグランスのボトルを掴み、レジへと向かって言った。
リエーフはゴールデンウィーク前の日も朝練後に私に会いに教室に来た。そして私の作ったお弁当を食べ、自分の教室に戻っていった。作ったものを美味しく食べてもらえればいいかなって思ってたから『お礼』なんて考えてもいなかった。
…どうせ食費はいくら増えたとしても、両親が私の銀行口座に入れてくれているお金で賄えるし。
そんなことを考えていれば、いつの間にかレジから帰ってきたリエーフの手に購入されたボトルの袋が握られていた。
「はいどうぞ。これでお揃いっすね!」
にこりと笑って袋を渡される。
私はボトルを受け取りお礼を言うと、曖昧に微笑んだ。