第28章 音駒高校文化祭2日目!
本日も朝6時には学校に到着。鍵を受け取り調理室に向かう。
鍵を開ければ今日も材料が並んでいる。
眠気でボヤリとした頭をしゃっきりさせるため頬を少し強めに叩き、私は作業を開始させた。
全ての生地をこね、最後の炊飯器のスイッチを入れたときには作業を開始してから1時間が経っていた。
マイボトルに入れてきた眠気覚ましのブラックコーヒーと、昨日余った生地で作ったパウンドケーキをカバンから取り出す。そのタイミングを見計らったかのようにリエーフが調理室に顔を出した。
「美優さんおはよーございます!」
『おはよ?パウンドケーキ食べる?キャラメルとくるみ入ってるやつ。』
昨日、あまりの生地に家にあったキャラメルソースとくるみをを入れてみたんだよね。私のお誘いに、リエーフは入り口の近くに鞄を置くと、教室の後方に並んでいる椅子を取りに行く。その間に私はお皿とフォーク、あとはリエーフのためにティーパックの紅茶を準備。
濃いめに入れた紅茶にお砂糖を。そして、昨日半端に余った生クリームと牛乳を入れてパウンドケーキにあうミルクティーに。
私の動作を目を輝かせながら見つめてくるリエーフ。
「やっぱ美優さんすげー!魔法みてー!」
キラキラした顔で私の方を見たリエーフは一瞬動きを止め、私の顔を覗きながら怪訝な顔をする。
「美優さん…ここ最近寝れてます?」
『…なんで?』
リエーフは私の目の下を指でなぞる。
「クマ…隠せてないっすよ?よく見ると顔色も悪いし。」
メイクで隠せてると思ったんだけど…やっぱりダメかな。いつもよりコンシーラー濃いめに塗ったんだけど。
「無理はよくないっすよ?」
心配そうに見つめるリエーフに、私は無理やり笑顔を作る。
『大丈夫。じゃあ食べよ?』
「…はい。」
私の返答にリエーフは怪訝な顔をしていたが、パウンドケーキを口に含んだ瞬間ぱっと目を見開いたかと思ったらにこーっと笑顔で私を見る。
私はリエーフの落ち込んだ顔より笑顔が見たい。
だから私のことなんて心配しなくていいの。
だから、笑っていて。