第26章 文化祭、問題発生⁈
「椎名、お前の将来の夢は?」
不意にマサちゃんから呟かれた言葉に私は間髪入れずに答えていた。
『調理師。料理を作るのが好きなのもあるけど食べて美味しいって言われるのが嬉しいから。食べて幸せな気持ちになってもらいたいから。ちなみに今回のマフィンはお砂糖、油控えめ。それでも美味しくなるように配合してみました。
おからパウダーと米粉が入ってて腹持ちもいいから女の子だったら1個でそこそこ満腹になると思うよ?ってリエーフは食べ過ぎ。』
2個目を食べ終わり、3個目に手を伸ばしたリエーフの手をピシャリと叩く。
『ね?食べてみてよ。』
3人はラッピングの袋を開け、ひとくちマフィンをかじる。
顔に広がる幸せの表情。強張った顔がふわりと緩む。
「おいし…」
ポツリと呟かれる嬉しい言葉。
それが聞きたかったの。
3人は私の方を見た。
「ごめんなさい。」
「「ごめんなさい…」」
「…解決だな。」
私は笑うと、マサちゃんの方を向く。
『マサちゃん、3人にジャージの請求書、渡しといてね?あと、マフィンもっと食べる?いっぱいあるよ?』
「どんだけ出てくんだよ…まあ、もう1つ。 」
みんな、マフィンをもぐもぐと頬張る。
「よかったっすね?美優さん。」
『うん。』
やっぱりモヤモヤは消えない。でも、そのままやり返したら悲しむ人がいるから。
だから、少しでも良い方向に持って行くことにした。
「じゃあお前ら授業戻れよー。」
「「「はーい。」」」
私達は教室に戻るために、一斉に廊下を歩き出した。