第1章 わんことの出会い。
数日前
『この時期本当眠い。』
5時限目と6時限目の間のこの時間が1番眠い。
暑くもなく寒くもないポカポカ陽気の本日。
…うん眠い。
私は机に突っ伏して寝る体制に入った。
「んなに足開いてんじゃねーよ。パンツ見んぞー。」
『うっさいクロ…見たら罰金。』
前の席から話しかけてくるのはつり目のトサカヤロー…もとい黒尾鉄朗。
1年からずっと一緒のクラスだからか男性が苦手な私にも気軽に話しかけてくる。
「なぁ、前から言ってるけどさ。またバレー部こいよ。」
『最近忙しくて行けてないけど…なんでよ。』
クロは私の長い髪を弄びながら話しかけてくる。
「研磨が寂しがってんだよ。美優(みゆ)は来ないの?って。本当愛されちゃってるねー。」
『けんまがそんなこと言うわけないでしょ…馬鹿なの?』
研磨ってのはクロの幼馴染で2年生。
人付き合いが苦手な彼は、なぜか私に懐いてる。
『見学行ったら毎回マネージャーの代わりさせるじゃん…やだよ。』
「お。美優部活くんの?」
『やっくん。行かないよ…』
話に割り込んできたのは夜久衛輔。
茶色い短めのくせっ毛、くりくりお目目が可愛いこの子もバレー部。
「えー!来てくれって。最近研磨まじで疲弊してるからさー。」
私はむくりと起き上がるとやっくんのいる方を向いた。
『やっくん、けんまがしんどそうってどういうこと?』
そう問うとやっくんはため息をつきながら教えてくれた。
「4月だから新入部員が入ったんだけどさ、1人がバレー未経験で研磨がスパイク練付き合わされてて…まぁボールが手に当たんねーんだ。」
『なんで初心者なんて引き入れたのよ。』
「リエーフ身長190だぜ!あれはミドルブロッカー向きだと思って俺が引っ張ってきた。」
『けんまの疲労の原因はあんたかクロ…っていうか”リエーフ”…?』
「あぁ。灰羽リエーフ。たしかロシアとのハーフ。」
『…ちょっとだけなら部活覗きに行ってもいいかな?』
身長190センチ、ロシアのハーフ。
どんな子なのかちょっと気になる。
まあ完全に野次馬根性だけど。
「よし!決まりな。後から行かねーなんて言っても問答無用で連れてくから。」
先生が来たため、クロとやっくんは席に戻っていった。少しだけわくわくしながらも呪文のような先生の声に私の意識はフェードアウトしていった。