第1章 わんことの出会い。
『ん?』
私は差し出されたリエーフの手を見ると、2、3度瞬きをしリエーフの顔を見る。
「せっかく2人で帰るんだし、手、繋ぎませんか?」
前に手を繋ぎたいって言われた時は”先輩後輩”だからって突っぱねたんだけど…
にこにこ、にこにこ
向けられる笑顔とこの雰囲気…断りにくい。
『…はい。どうぞ?』
伸ばされた手に乗せたのは、有名なぽん!と丸いもきゅもきゅするドーナツ。ぽかんとした顔で私を見るリエーフにくすり、笑う。
『さっきマフィン食べれなかったでしょ?あの後作ったの。リエーフの分だよ?』
言うか言わないかのうちに、リエーフは包んでいた袋からドーナツを取り出し口に運ぶ。
「うまー!」
ぱくり、ぱくり。
咀嚼が早いのかすぐに口の中へ消えていくドーナツ。慌てて鞄から2つ目を取り出すと、お礼を言いながらそれはどんどん口の中に消えていった。作ったドーナツ6つのうちの4つを完食し、リエーフは満足げ。
「ごちそうさまでした!あのドーナツって作れるんですね!」
すげー!と感動するリエーフ。
これで手を繋ぐのは忘れてくれたかな…なんて思った時再びリエーフの手が差し出された。
「手、繋いでもいいですか。」
…ここまで覚えられてたらしょうがないか。
私は小さくため息を吐きながら、差し出された大きな手に自分の手を乗せる。リエーフの大きい手は私の手をそっと包み込んだ。
あったかくて、ごつごつした男の人の手。
初めての感触に、どきりと胸が鳴った。
『これで満足?』
恥ずかしさをツンツンした態度でごまかす。
「本当は抱きしめてチューしたいです!」
『ちょっ!リエーフっ‼︎‼︎』
ストレートな言葉に私の顔は沸騰寸前。きっと赤面している。
顔を隠すように俯けば、そんな私の顔をリエーフは体を屈ませ覗き込んで無邪気に笑う。
「ほっぺ、真っ赤でリンゴみたいっすね。やっぱり美優さん可愛い。」
体を起こしたリエーフはいきましょーと軽く手を引き歩き出す。
どきん、どきん。
結局駅に着くまで私の心臓の高鳴りは止まらなかった。