第1章 わんことの出会い。
さて、ゴールデンウィーク終盤。
リエーフとお出かけの予定を立てた日。
駅を出て、待ち合わせをした広場にちょっと早めに行くとあいつ…リエーフはいた。物陰から観察すれば端末を持ちそわそわきょろきょろしている。
どのくらい前からいたのだろう。手にしている飲み物はすでに空っぽ。それなのに捨てに行くこともしないまま私が来るのを待っている。
ふ、と目が合う。
私を見つけたリエーフは飼い主を見つけた犬のように目を輝かせ走って近づいてきた。
「みゆさぁぁぁぁぁぁぁぁぁあん!」
『リエーフ、ストップ。』
抱きつこうとするリエーフを制止すると目の前で止まる。
にこにこ
にこにこ
きっと尻尾があったら振り切れんばかりに振っているんだろうな。
待てないオーラを醸し出す前で軽く手を広げた。
『リエーフ、おいで?』
OKサインを出すとすぐに抱きしめられる。
194センチと154センチ。
40センチの差は一気に縮まる。
ぎゅうぎゅうと抱きしめられるが、初夏の日差しが私達を照らす。
『暑い、あんまりくっつかないで。』
「だって美優さんちっちゃくてふわふわで気持ちいいんだもん。」
『そうか…チビデブって言いたいのか。』
「ちがいますよー!太ってんのと抱き心地がいいのは全然違う!」
私の言い分が不満のようで頬を膨らませた姿に思わず吹き出すと膨れた頬を指先で軽くつつく。
『で、今日はスポーツショップに行くんでしょ?』
「はい。俺まだバレーシューズとか持ってないんで!他のバレー用品も欲しいし!あと部の買い出し!」
目的を思い出したリエーフが腕の力を緩めると、伸びた手は私の手を掴む。
当たり前のように繋がれる手に拒否の気持ちはもうない。
そうして私達は街の中に溶け込むように目的地に向かって進み始めた。