第22章 Just be staring into your eyes
side月島
「美優さんの家の事情は俺は知らない。美優さんが話してくれるまで待つよ。」
僕の頭を撫でながら灰羽は言った。
「それ…」
どういうことかと聞こうと思った。でも、灰羽の寂しそうに笑うのを見たら僕は言葉を紡げなかった。
「ツッキーは聞いてるの?美優さんの家のこととか。」
「まあ…」
「いつでも両親いないし、学生なのに会計にクレジットカード使ってたり…俺からの食事代絶対受け取ってくれかったり…鈍感な俺でも何かあるんだろうなってさすがにわかるよ。」
僕から目をそらした灰羽はいつもの騒がしい声とは打って変わって静かに話し始めた。
「でも、無理に聞いたって美優さんのためにはならないだろうし…その分、俺にしか出来ないことやろうかなって思って。」
俺には甘やかすくらいしかできないなんて言って笑った灰羽。この2人の間には入る隙間がないんだなと改めて思い知らされたような気がした。
家庭の事情を聞いている僕の方がリードしているつもりでいたけどそんなことはなくて…大人の対応をしている灰羽の方がよっぽど美優さんのことを理解している。
「なんかムカつく…」
「えっ!なんで!」
「知らない…もう寝る。」
僕は1人で寝るには大きすぎる美優さんのベッドに入ると美優さんの横に寝転んだ。
「ツッキーばっかりずるい!俺も!」
僕の反対側…美優さんと壁の間に灰羽は入り込んだ。
朝が来るまであと2時間。
美優さんから香る甘いシャンプーの香りを嗅ぎながら僕は眠りに落ちた。