第1章 わんことの出会い。
『そんなに落ち込まないで…?』
「美優さんのマフィン…」
マフィンを食べられずに落ち込むリエーフをよそにみんなはシートやら籠、ゴミを片付けながら次々と声をかける。
「悪かったって…なあ?」
そうフォローするのはクロ。
「お前が保健室に行ってたのすっかり忘れてたんだよ。」
正直に忘れてたことを伝えたのはやっくん。
「リエーフお前タイミングわりい!」
そう言って笑ったのは山本。
「このタイミングで突き指するのリエーフが悪い…美優、アップルパイの約束忘れないでね?」
「研磨さりげなくリクエストかよ!俺野菜炒め!」
「俺にサンマ焼いてくれ!」
『クロのは秋にならないと無理。』
「うわぁぁぁぁぁぁあ!俺のさんまぁぁぁぁあぁあ!」
「黒尾、うるさいよ?」
もう誰もリエーフ慰めようとしてないよね?
マフィンが食べられず1人落ち込んで壁際でちっちゃくなっているリエーフに私は近寄ると、目の前に膝立ちになる。
『リエーフ?一緒に帰るんでしょ?後で渡したいものがあるんだけど…』
膝に顔を埋めていたリエーフは顔を上げ、私を見る。
まだ顔がしょぼーんとしてる。
「なんですか?」
『それは放課後まで秘密。その方がワクワクするでしょ?だから、欲しかったら元気出して?リエーフは笑ってた方が可愛い。』
そう言いながらそっと頭を撫でるとリエーフの眉間に皺がよる。
「俺、かわいくなんかないっす。」
不貞腐れたリエーフはふいと私から目をそらす。そっちがそういう態度なら…
『不貞腐れてるリエーフくんとは一緒に帰りません!』
「うわっ!美優さんずりい!」
膝立ちのまま背を向け、リエーフから離れようと立ち上がりかけた私の腕をリエーフが引っ張る。バランスを崩した私は、座っていたリエーフの足の間に収まる。
『だからリエーフ!離れなさい!「やだ!」
リエーフは駄々をこね、私を腕の中に閉じ込める。
「美優さんとはなれんの…やだ……」
『もう…本当、リエーフは甘えただね…でも…まだ部活終わってないからね。』
好奇心でこちらに向く周りの視線が恥ずかしくて私はリエーフの腕をぺちりと叩いた。