第1章 わんことの出会い。
みんなのところに戻るとたくさんあったマフィンは残りわずかになっていた。
「やっぱうめーな。美優の作るもんは。」
「同感。美味しい。」
「甘いもの苦手な俺も食えるし。」
そう話をしながらマフィンを食べるのは、3年生の3人。
「女神が作ったもの…神々しい」
いや、カップケーキ掲げて泣くんじゃないよ…山本。
福永なんて自分の分抱えて静かに食べてるじゃない。
自分の分を食べ終えたらしいけんまが私の方にやってきてにこりと笑う。
「…美優、今日のも美味しい。今度はアップルパイ食べたい。」
『ありがとけんま。アップルパイは今度作ってもってくるから楽しみにしてて?』
けんまに頼まれちゃうとなんでも作ってあげたくなっちゃうんだよなぁ。けんまと話をしていれば、食べ終わったらしい一年生が私に駆け寄ってきた。
「カップケーキマジでうまかったっす!ごちそうさまでした!」
「椎名先輩、美味しかったです。ごちそうさまでした。」
それぞれお礼を私に言った2人は残ったカップケーキの争奪戦に向かっていった。やっぱり料理を褒めてもらえるのは嬉しいな。笑顔で食べてるのを見ると私も嬉しくなっちゃう。
あれ?リエーフは?
ふと気がつけば、1番目立つはずの銀髪のせいたかのっぽがいないことに気づいた。
リエーフならたぶんきっと1番に食べに来るのに…
そう思いながら体育館を見渡してもどこにもいない。
『ねえ、リエーフは?』
「「「あ」」」
私が問うた瞬間みんなの声がハモる。
「戻りましたー!」
やっくんがじゃんけん争奪戦で勝ち取った最後の1個のマフィンにかぶりついた瞬間、リエーフが体育館に帰ってきた。