第1章 わんことの出会い。
『みんなお待たせー!』
体育館に戻ると、休憩中のメンバーが一斉にこちらを見る。
今から何が起こるのかわからず不思議そうな1年生と事情を知っていて期待の眼差しの2、3年生。
私は綺麗に除菌しておいたシートを体育館の床に敷き、その上にマフィンを入れた籠を置くと声をかけた。
『今日はマフィンです。1人3個くらいずつかな?1年生も食べてねー!』
そう声をかけると、腹減りバレー部は勢いよく手を合わせる。
「「「いただきまーす‼︎‼︎」」」
掛け声とともに山のようにあったマフィンがみるみるなくなっていく。
私はそれを横目に見ながら猫又監督と、直井コーチの元に近寄る。
『毎度お騒がしてすいません。これよろしければどうぞ。』
私はみんなのものとは別に分けておいたマフィンを監督たちに渡した。
ちなみに猫又監督には抹茶、直井コーチにはチョコとプレーン。
「調理室からいい匂いがしたからみんな張り切っておったよ。じゃあいただくとしようか。」
そう言うと猫又監督はマフィンの包みを開け始める。
「いつも悪いな。椎名。」
直井コーチにマフィンを渡せば申し訳なさそうにお礼を言われる。
『いえ…むしろこっちこそ…部費入れていただけてるおかげで活動できてるので…』
そう。
実は私が所属している家庭科部は調理部門が私しかいない。
っていうか調理部門は私が作った。
そのため、私に割かれる部費も少ない。
そのためほぼ実費で活動をしていたのだけど、ちょくちょく差し入れしていた男子バレー部から、”私が部活をするときに作ったものを差し入れしてくれればその分の部費を出す”との提案を受けた。
こちらとしては願ったり叶ったりの申し出ですぐにOKを出し、そこから週1程度差し入れを持って行ってたんだけど…
3年になったら受験関係で放課後忙しくなっちゃって新学期始まってから1回も活動できてなくて…
だから今日の差し入れは久しぶりになる。
『最近差し入れ来れてなくてすいません。』
「受験生だもんな。忙しかったんだろう?まぁ、椎名の作るものはなんでもうまいからな。みんな楽しみにしてんだ。」
直井コーチは私の頭をぐしゃぐしゃと撫で、笑う。
『ちょっと、コーチやめて!』
「またうまいもん頼むぞ!」
私は乱された髪を直し、笑うコーチに一礼するとマフィンをがっついているみんなの元へと戻った。