第1章 わんことの出会い。
放課後。
バレー部の部活が休憩に入る頃を見計らって、私は体育館を訪れていた。
みんな動いているからか体育館は蒸し暑く、風通しがいいようドアは開け放たれている。そこから中の様子を覗き見ると、ドアの近くにいたクロが壁に寄りかかって座りながら休憩をしていた。
『ねえ、クロ。今大丈夫?』
私に気づいたクロは立ち上がる。
「ああ、休憩入ったばかりだから大丈夫だけど…どうした?」
『みんな…お腹空いてない?』
「いつものか?」
私がこくりとうなづくとクロはニヤリと笑う。そしてクロはそのまま猫又監督のところに走り寄り、一言二言話をすると私の方に向かってきた。
「よーし!お前ら集合して待ってろー!よし行くぞ。」
そう声をかけたクロを引き連れて、私は元来た廊下を進んだ。
「今日はなんだ?」
少し嬉しそうな声でクロは今日の制作物を聞いてくる。
『マフィン。プレーン、チョコ、抹茶で作った。』
「お、美味そう。いつもわりーな。」
『別にー?作るのが好きなだけだし。あとは小麦粉そろそろ賞味期限切れそうだったから…』
言い訳をしながら家庭科室に入ると山のようになった出来立てのマフィンが机の上に鎮座している。バレー部のメンバー1人につき3〜4個は行き渡りそうな量だ。
「こりゃあすげーな…」
『消費してくれると嬉しい…』
考え事してる時とか悩み事があるときって料理がはかどるんだよね…特に一気に生地を作れるカップケーキは何個カップがあっても足りなくなる…そんなこんなで今回もついつい作りすぎた。
私は家庭科室に持ち込んでいた大きめの籠にマフィンを入るだけ入れ、クロに渡す。それでも入りきらないマフィンをもう1つの籠に入れて持ち、先に体育館に戻ったクロを追いかけるようにして体育館に急いだ。