第20章 夏休みは始まったばかり!
「あーーーーー‼︎‼︎研磨さんばっかりずるいー!俺だって美優さんとイチャイチャしたい!」
叫び声が聞こえたかと思ったらバタバタと走る音。リエーフは走るスピードそのままに私に抱きつきに来る。
『リエッ…リエーフ!ストップ!』
その勢いに静止をかけるとリエーフは私に飛びつく一歩手前でブレーキをかけ、止まる。運動神経抜群なだけあって瞬間的な動きが素早い。
『いーよ?おいで?』
ちゃんと勢いを止められたのでOKを出すと、すぐさま私は抱き上げられリエーフがあぐらをかいた足の上に乗せられ後ろから抱きつかれる。
「見てて暑苦しい…」
『うん…暑い。』
けんまは私の前にしゃがみ込むと口角を少しだけあげて私をみる。
「美優が思うように動けばいいんじゃない…?だって、クロみたいな言い方したら…美優にベタ惚れ…?でしょ?」
「美優さんは渡しませんよー!俺、美優さんが思う以上に美優さん大好きなんですから。」
「ほら…」
リエーフの抱きしめる力は強く、それでいて心地よい。それだけで不安は減っていく。
『ありがとけんま。』
「お礼はアップルパイね?」
『ん、了解。ワンホールまるまるプレゼントしちゃう。』
けんまに笑いかけると、リエーフの私を抱きしめる力が強くなる。
「研磨さんずるい…」
しょぼぼんと拗ねるリエーフの頭を引き寄せると私はリエーフにしか聞こえないような小さい声で呟く。
『私が好きなのは、リエーフだけ…だよ?』
「不意打ちずるいっす…」
少しだけ顔を赤らめるリエーフが可愛くて思わず頬にキスしようとすると、遠くからクロの叫び声が響く。
「そこのバカップル!部活中にいちゃつくの禁止だ。」
そういえば、ここ体育館だった。
顔を離そうとする私を、リエーフはぎゅっと抱きしめる。耳に唇を近づけいつもより低い声でぽそりと呟くリエーフに私は顔を真っ赤に染めた。
「部活終わったら覚悟してくださいね?むちゃくちゃチューします…」
部活が終わって欲しいような…
終わらないで欲しいような…
こんなにドキドキするのはリエーフだけ…なんだよ?