第20章 夏休みは始まったばかり!
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じりじりと暑い太陽が容赦なく体育館の気温を上げていく。
『今日のおやつは水まんじゅうね?』
今日の差し入れを持ってくると部員たちは我先にと冷えた水まんじゅうを奪うようにして食べ始める。
いやー、今日も平和だなー。
私は先に取り分けておいた水まんじゅうを持ち、けんまに近寄る。
『はい、けんま。』
「ありがと…美優。」
私から受け取った水まんじゅうをもふもふと食べるけんま。小動物みたいで可愛いなぁ…
「そんなに見られると食べづらい…」
『ごめん…』
どんどんなくなる水まんじゅうに目を向けながら私は壁に背を預け座る。
「美優…なんか悩んでる…?」
『ん?なんで?』
「今、ため息。あと…表情?」
けんま目ざとい…
『いや…ね。リエーフと付き合い始めたんだけどさ…』
「初体験、うまくいかなかった…?」
『ちょっ!けんまぁぁぁあ‼︎』
私は慌ててけんまの口を塞ぎ、もう片方の手で自分の唇に人差し指を当てる。その姿を見たクロが遠くからニヤニヤしながら叫ぶ。
「研磨ぁ!美優で遊ぶなよー。」
『クロ、余計なこと言わない。やっくーん、クロの分の水まんじゅう何個か没収してー』
「おー!ありがたくいただくー!」
「ちょっ!やらねーよ!」
クロの水まんじゅうを取ろうとするやっくんの動きがまた素早くて笑ってしまった。
「美優のタイミングでいいんじゃない?…焦っても、いいことないよ。…多分。」
私の隣に座るけんまは、ぽそりと呟いた。
『愛想…つかされないかな…』
けんまは私の頭を撫でながら私を見つめる。
「リエーフはそんなやつじゃない…と思う。もし、愛想つかされたら……おれのとこに…来なよ。」
いつもより真剣で、いつもより少し赤い頬でそういうけんまは男の子の顔をしていた。
『…ありがと、けんま。』
その気持ちがありがたくて、私は目を細めて笑った。