第1章 わんことの出会い。
私がご飯を口に運んでいれば、先に食事を終えたリエーフが私に話しかけた。
「美優さんのおかーさん料理上手っすね!」
…ん?なぜ私の母の話が出てくる?
きっと不思議そうな顔をしていたのだろう。リエーフがにかりと笑って手で三角を作る。
「さっきの弁当むちゃくちゃおいしかったっす!」
ああそういうことね?私が言葉を正そうとすると、それより前に千景が訂正を入れた。
「灰羽、あの弁当美優が作ったやつ。」
「マジすか‼︎美優さん料理上手っすね!」
にこにこしながらリエーフは私を褒める。少し照れくさくて私はぶっきらぼうに答えた。
『別に…両親あんまり家にいないから必然的にやるようになっただけだよ。』
「それでもすごいっす!どのおかずも本当にうまかった!」
『じゃあ、つくろっか、お弁当。』
朝すごく美味しそうに食べてくれたこと、手放しに褒めてくれたことが嬉しくて、私はリエーフに提案をする。
きらきらと輝いていたリエーフの目がさらに輝いた。
「まじっすか⁈」
『朝練の後お腹空くんでしょ?どうせ毎日自分のお弁当作ってるしついでに作るよ。あとお昼も食べる?』
「いいんですか⁈やった!美優さんの手料理‼︎」
そういいながらリエーフは私をぎゅーっと横から抱きしめた。
『リエーフ!人が見てる!』
見た目が目立つリエーフが目立つことをするから案の定食堂中の視線が私に刺さる。
リエーフに羞恥心はないのか。
「だってうれしいんですもん!」
『はーなーしーてー!』
離してくれないリエーフから必死で逃げようとするけれど余計にぎゅうぎゅうに抱きつかれてしまえば逃げられない。
「大型犬に懐かれた飼い主…って感じ。見てて微笑ましいわ。」
『千景!見てないで助けて!』
「有害じゃないしいいんじゃない。つか、早く食べないと昼休み終わるよ?」
そう言い千景は自分の空のお弁当の包みを持ち帰るアピール。
リエーフの腕から必死に顔だけ出し時計を見ると、昼休み終了15分前。私の中華丼はいまだに残っている。
『リエーフ!ご飯食べるから離して⁈』
リエーフはまだくっついていたいのかふくれっ面だ。
「えー…じゃあ今日一緒に帰りません?」
『わかったから…とりあえず離して』
「…はーい」
不満げなリエーフから離れた私は、急いで生ぬるくなった中華丼を頬張った。