第17章 夏合宿、最終日。
私を掴む手は力強く、私の抵抗なんてやすやすと跳ね返す。
蛍の薄くて形の良い唇が触れる。触れた唇の隙間から強引に舌が割り込めば、蛍の舌は歯列をなぞるように動きたまらずに口を開く私が口を開いたのが分かれば、待ってましたとばかりに蛍の舌がねじ込まれ、逃げ腰な私の舌に絡む。
強烈な快感。
静かな教室に淫らな水音だけが響く。気持ち良すぎて立っていられなくなった体はずるずると重力に負けていく。それに気づいた蛍はとっさに私の足の間に自分の足を割りいれた。それすらも快感となって私の体に刺激を与える。
だめだと思う気持ちとは裏腹に快感を求める自分。いつの間にか肩に添えた手は蛍にすがりつくように捕まっている。時折漏れる声は自分のものとは思えないくらい艶かしい。
ようやく解放された唇からは口から溢れた唾液が伝い蛍にすがりつきながらその唾液を拭った。
「………きもちよかった…デスか?」
『…ちが…』
言い訳のように呟いた言葉は再度軽く塞がれた蛍の口に吸い込まれる。
「そんな緩みきった顔と力の入ってない体で言われても説得力ないですよ?このまま僕のものになってくださいよ。」
「ツッキーには渡さないよ?」
からり、と音を立てて開く入り口。
『りえ…ふ』
「もー、美優さん俺以外の前でそんな顔すんの禁止!」
リエーフは後手でドアを閉めこちらに近づいてくる。
「ぐずっぐずに蕩けてエロい顔してる。ツッキーにキスされてそんな風になっちゃったの?」
「だからツッキーって呼ぶのやめて。」
リエーフにそっと顎を掬われ見つめられる。私の顎に添えられた指でさえ私に刺激を与える。蛍にすがりつくようにしながら私は息も絶え絶えにしゃべる。
『りえ…ふ、けい…立てない…』
「ツッキー美優さんに何したの。腰立たないとかテクニシャンじゃん。」
「うるさいよ…」
私の脇の下に手を差し込んだ蛍はヒョイっと体を持ち上げ、そのままリエーフに手渡す。
「少し休ませてあげて。言い訳はこっちでしておくから。」
そういうと蛍は流れるような動作で顎をすくい唇に触れた。
「本当は離したくないんですが、いいもの見れたんで…また連絡しますね?」
「俺が見てる前でチューすんの禁止ぃー。」
「うるさい…」
蛍は私達に背を向けると、振り返らずに調理室を去っていった。