第1章 わんことの出会い。
「じゃあ行って来ます!」
『よろしくねー!』
ここは食堂。
朝、お弁当を食べ尽くし落ち込むリエーフに私はおつかいを頼んだ。昼食時、自分で買った食券を渡してリエーフに買いに行ってもらうっていう簡単なおつかい。
食事を取りに行く後ろ姿を見ながらぽつり、千景が呟く。
「従順な飼い犬…って感じだね。」
『どうやっても犬に見立てたいみたいね…千景。』
千景は、悪どい笑みを浮かべると机の向かいから身を乗り出し、私に話しかけた。
「事情は聞いたけどさ、付き合っちゃえばいいじゃん。優良物件だと思うよー?」
『軽っ!ヤダよ。まだどんな人かわからないのに付き合うとか。』
「ホントそういうとこお堅いよね。美優は。」
千景はゆるゆるすぎるんだよ。と言いたくなった…が、止めた。
千景は、クールビューティという言葉が似合う子だ。
黒髪の襟足長めのショートカット。
切れ長の目。
ぷるぷるの唇。
付くところにはついて、無駄なところには肉がない。
身長も165㎝越えててモデルみたい。
そのため、言い寄ってくる男は数知れず。
言いよってきた相手を拒むことをしないからついたあだ名が「魔性のオンナ」。
それに比べて私は…
150ちょっとしかない身長。
体のバランスも悪くて…
…すいません。アホみたいに胸だけ育ちました。
顔もそこまで可愛いわけじゃない。
髪の毛もくりっくりの天パ。
短いと余計にハネがひどくて鳥の巣みたいになるからできるだけ長く伸ばしてる。
ストパーかけてもヘアアイロン使ってもほとんど持たない。
だから千景と並ぶと自分が余計に子供っぽくて嫌になる。
羨ましいなぁ…
私は目の前の千景を見ながら隠れてため息をついた。