第17章 夏合宿、最終日。
「ほんっと懐かれてますねー。美優さん。」
『…言わないで』
包丁でピーマンを切っているといつの間にか横に来た雀田ちゃんに肘で脇腹を突かれた。
「さっきなんてちゅーしてたしー。」
「ちゅーですと⁉︎」
『白福ちゃん、余計なこと言わない。仁花ちゃん手元気をつけてね?ピーマン準備OKだよー。次なに切る?』
「玉ねぎお願いしてもいいですか?」
『おっけー、大滝ちゃん。じゃあもらうよー。』
私達がなにしてるのかって?今から行われるバーベキューの下ごしらえですよ。すぐに焼けるように裏庭に用意された机で準備をしている。ちなみに部員達は試合をしている学校があったり自主練したりとさまざま。
ピピーッ
体育館からラストの試合が終わったことを告げるホイッスルが聞こえた。
「試合、終わったみたいだね。」
『そうだね。急がなきゃ!清水ちゃんおにぎりお願いできる?こっち終わったら手伝いに行くから。』
「わかった。作っておく。」
「清水先輩!私もやります!」
「仁花ちゃん、ありがとう。」
「しゃっす‼︎‼︎‼︎」
烏野マネ2人はみてて癒される。
なんだあれ。
天使だ。
天使がいるぞ。
とりあえず天使2人を愛でながら野菜をあるだけザクザク切っていく。
いつのまにか野菜を切ることに集中していたため、次に顔を上げた時には体育館の中の約1週間ずっと立ちっぱなしだったポールは取り払われ、合宿が終わることを私に教えてくれているようだった。
もう終わりか…
なんで余韻に浸っていたが、私の目線の先にモップがけをしながら走り回る橙と白銀が私の余韻を掻き消す。
『リエーフー!ちゃんと掃除しないとお肉あげないよー!』
私の声に肩をビクつかせたかと思ったらさっきよりは真面目にモップをかけているリエーフを見てちょっとだけ笑えてしまった。