第17章 夏合宿、最終日。

音駒の試合が始まったけどちょっと烏野の試合が気になる。ちらちら気にして見てるんだけど、初日に猫又監督が言ってたように本当に雑食というかなんというか…
リベロのジャンプトスとか、４人がボールに向かって走り出すシンクロ攻撃とか。
合宿中頑張ってたことが少しずつ成果として現れているみたい。
まるで成長するために必死で土に根を張り、栄養を吸収する植物みたいに。
今まで以上に連携がうまくいっている烏野とは反対に、落ち着きをなくしているのは言わずと知れた梟谷のエースアタッカー。
自分のミスに一喜一憂してる。
テンション上がりすぎていつも以上にうるさい。
ある時木兎がスパイクミスをしたんだけど、その瞬間梟谷のメンバーの顔がいやーなものになる。特に赤葦なんか苦虫を噛み潰したような顔をしている。
どうした？
なんて思っていたら木兎が赤葦に話しかけた。

「今日はもう俺に上げんなっ……‼︎」

なんだあのテンション激落ち木兎は。
私はこっそり梟谷のコートまで走り、雀田ちゃん、白福ちゃんに話しかけた。

『ねえねえ、木兎のあれ、なに？』

「あぁ、あれ『しょぼくれモード』ですよ。」

『しょぼくれモード？』

簡単に言うと、試合でミスが多発するとああなるらしい。しょっちゅうしょぼくれるのか、梟谷メンバーはそこまで一大事とは思ってないみたいで淡々と試合を進めている。
結局、梟谷と烏野の試合は最後に木兎がしょぼくれモードから脱出し、見事なスパイクを決めてくれたみたいで梟谷が勝利したようだ。
ちなみに音駒と生川の試合はラスト、珍しくリエーフが1発スパイクを決めてゲームセット。試合が終わった後リエーフは一目散に私に抱きついてきて「最後決めたからご褒美ー‼︎」ってキスしようとして来るし…
必死に抵抗したんだけど、結局は押し切られる形でほっぺだけ許した。
だから人前は嫌だって何度も…
まぁ、しょうがないか…リエーフだし。