第1章 わんことの出会い。
次の日の朝。運動部が朝練を終えて教室に戻る時間。
文化部に所属している私はいつもその頃に登校する。
教室に着いて鞄を置くとその足でロッカーに行き、置きっぱなしの教科書たちから今日の授業の分を取り出し自分の席に戻る。友人が来ていないことに気づき、連絡が来ていないかチェックしようとスマホを取り出した時にその事件は起こった。
ガラッと教卓の前の扉が開いたと同時に上から声が降ってきた。
「美優さん!おはよーございます!」
え?
ここにいるはずのない人の声に驚き、顔を上げるとそこにはリエーフがいた。
『おはよ…』
突然のイケメンの出現にクラスにいた女子は黄色い声を上げる。そんなことお構いなしのリエーフは私の机の前にしゃがんでニコニコと笑っている。
『なんでクラス知ってるの?』
「黒尾さんに教えてもらいました!」
『なんでうちのクラスに来たの?』
「美優さんに会いに来ました!」
『なんで?』
「会いたかったから!」
その行動に驚きつつよくよく見ると、朝練のあと急いで来たのかワイシャツとスラックスのみ。ベストとネクタイは着用していない。
そんなに急いだのかと嬉しくなったけれど、急な突撃は流石に驚く。
『せめて連絡頂戴?急に来られるとびっくりするから…』
戸惑いながらもリエーフに話しかけている間も背中に刺さる好奇の目に重くため息。そんな時、後ろから肩を叩かれ振り返ると、明らかに好奇の目で見ている私の親友、高梨千景(たかなしちかげ)の顔がそこにあった。
「おはよ?どーしたのそのイケメン。どっから拾ってきたの。」
『拾ってきたって…せめて連れてきたとか言おうよ…千景。』
「ごめんごめん。で、どうしたの?その子。」
謝りながら千景は、自分の席…私の隣の席に座った。
『本人に聞いて…リエーフ、自己紹介。』
私は説明が面倒で丸投げすれば、リエーフは千景に視線を向けた。
「灰羽リエーフ、1年っす!美優さんに会いに来ました!」
「そこじゃないのよ美優。なんでこのイケメンくんが美優に会いに来たかが知りたいの!」
こちらを向く千景の瞳が輝いている。
ほんっと、千景ってゴシップネタ好きね…
『それについてはまた後で話するよ…』
周りがみていない、聞いていないときにでもね…
そう思いながらいまだに向けられる周りの視線に再びため息をついた。