第15章 夏合宿5日目。
「あの…」
アドバイスを聞いた蛍が呟く。
「一応…僕ら試合になったら敵同士ですよね?どうしてアドバイスしてくれるんですか?」
聞かれたクロはすこし真面目な顔をし、答えた。
「僕が親切なのはいつものことです。」
聞いていた蛍は、光のない目でクロのことを見ている。
隣のしょーよーまで珍しく何この人…って感じで見てるし…
「何もそんな目で見なくても…」
『今のはクロが胡散臭い。』
「胡散臭いってなんだよ!」
『いや、そのまんまの意味だけど…』
クロは頭を掻きながらぽつり、ぽつりと答えていく。
「”ゴミ捨て場の決戦”ってやつをさ、なんとか実現したいんだよね…ウチの監督の念願だし…けど監督はあとどんくらい現役で居られるかわかんねーしさ。」
確かに。猫又監督はもうすぐ70歳。この先、何十年も現役で監督できるわけじゃない。
クロはそこまで考えてるのか…
「それにはおまえら烏野にも勝ち上がってもらわなきゃなんねぇだろ?…まぁ、俺の練習でもあるワケだし、 細かいこと気にすんなっつーの。」
『あ、クロ照れてるでしょ。』
「照れてねーよ!美優、余計なこと言うなって‼︎ほら練習練習ー。」
時計を見ると食堂が閉まるまであと1時間半。
『あと1時間くらいしかできないんだから集中してねー。』
「「「おー‼︎」」」
眠気も飛んだ私は得点ボードの横に向かい、試合を見つめた。