第14章 夏合宿4日目、夜。
教室に光が入り込み、すぐに乱れた服装を直す。
その姿を見ながら入り口に佇むクロはため息を吐いた。
『クロ…』
「もしかして…見てました?」
リエーフは敵意を剥き出しにしながらクロを見る。
「いーや?今来たばっかりだ。」
ニヤリと口端をあげ笑うクロ。
「確かに今日のは俺にも非がある。それに赤葦も確かに挑発するようなこと言ってたし。お前がカッカするのもわかる。でもな…」
すっと口元の笑みがなくなり真剣な顔つきになる。思わず姿勢を正せば低い声が頭上から響いた。
「さすがにこれ以上は『部長』として許さねえからな。部活としてここに来てんだ。これ以上迷惑かけんじゃねえ…リエーフ。」
怒られて当然だ。みんなが真剣に合宿に臨んでいるのに、それに反することをしているのだから…
『クロ…ごめん』
「すんませんでした…」
「じゃあお前ら風呂。ついでに風呂掃除な?それでチャラにしてやるよ。」
少し沈んだ気持ち。
クロが笑いながら言ってくれたおかげで少しだけ心が軽くなる。
「だから…んな通夜みてえに暗い顔すんじゃねえ。そういうことはプライベートでやれって言ってんだよ。」
私とリエーフの頭をぐしゃぐしゃと撫でながら笑う。
『髪の毛ぐしゃぐしゃ…クロのバカ。』
「リエーフ、んなにへこんでっとお前より先に美優、喰っちまうぞ?」
「それはいやです!」
「だったらさっさと風呂入ってこい。消灯時間まで戻ってこなかったら今回のこと監督に言いつけるからな!」
ビシッと指をさしながらリエーフに怒鳴るクロ。リエーフはマジすか!って慌てながら教室から走っていく。
私もお風呂に行かなきゃ
立ち上がろうとすると目の前に手が伸びる。
「ほら…立つんだろ?」
ありがたくその手を掴むとふわりと身体が起き上がる。
「本当、軽いな。もっと飯食えって。」
『ちゃんと食べてるから。つかお風呂上がりで髪の毛立ってないからクロがクロじゃない。』
「こっちの黒尾サンもかっこいーだろー」
『調子のんな。私もお風呂行ってくる。』
クロの手を離し私も教室から出るためリエーフが開けっ放しにしていったドアを潜る。
『クロ…迷惑かけてごめん。リエーフ止めてくれてありがとう。』
そう呟くと、クロの返事も聞かず私はそのまま部屋に向かった。