第13章 夏合宿4日目。
『とまあ、こんな感じ。』
私は両親のことをかいつまんで話した。
『私の父と母は、私を自分の子供と思わなくなり、お互い好きなように仕事して、遊んでるってわけ。私には無関心。』
できるだけ明るく話してはみたけど結構きついな…
蛍に隠れてため息をつくと蛍は少しムッとした顔をする。
『蛍?』
「別に…話聞いたからってわけじゃないけど、少しくらい僕に頼って欲しいんですけど…隠れてため息なんてつくくらいなら僕にもっと洗いざらい話して楽になればいいじゃないですか。」
『そうなんだろうけど…』
私が俯くと、頭の上に何かが乗る。
それを確認するため顔を上げると蛍の手が私の頭を撫でていた。
「僕じゃ…頼りにならない?」
少しだけ頬を染め私を見ている蛍。
澄ました顔や、嫌味ったらしい笑顔しか見てこなかった私にとってその表情は新鮮で、私の顔は一気に熱を帯びる。
「あ、照れた。」
『うるさい…』
蛍はケーキと一緒に頼んでいたアイスティを飲みきると席を立つそれを見て慌てて私もカフェオレを飲みきる。
立ち上がり、蛍の側に寄ると蛍は私に歩幅を合わせ歩き出す。
『蛍、話聞いてくれてありがとう。』
「じゃあお礼…もらってもいいですか?」
『じゃあ今日のデザート生クリーム増し増しとか?』
不意に蛍が立ち止まったため私は何歩が進んでしまい、急いで戻る。
『何、蛍…急に立ち止まって…』
言葉は最後まで紡げなかった。
いつの間にか目の前には蛍の顔があった。
掬われた顎に思わず唇を引き結ぶ。
「ファーストは本命に譲ってやったんだから…セカンドは僕がもらいます。」
そう言って口の端をあげにやりと笑う蛍
「僕もあなたのこと狙ってるの…忘れないでくださいね。好きですよ?美優サン。」
掬われた顎か引き寄せられ柔らかな感触が触れた。