第13章 夏合宿4日目。
午前の練習をしていると、私は急に手招きで猫又監督に呼ばれる。
私何かヘマでもした?
急いで駆け寄ると猫又監督はにやりと笑い、私に耳打ちをした。
「嬢ちゃん手製のわらび餅が食べたい。」
『……え?』
なんですと?
「この前差し入れで作ってくれたやつ。ついでにここに集まってる奴らが満足できるような冷たい菓子とか頼めるか?」
作れなくはないけど…急すぎじゃない?
『調理室は…』
「抑えておる。」
『材料が…』
「そうか、買い出しが必要か…おーい!繋心!」
なぜか猫又監督は烏野のコーチを呼び出す。金髪で怖そうだからちょっと近寄りがたいんだよな…
「なんすか?猫又先生…」
近づいてきた烏野のコーチは面倒くさそうに猫又監督の話を聞く。
「上手い菓子食わせてやるからこの嬢ちゃん連れて買い出し行ってこい。」
「『はぁ⁈』」
猫又監督⁈なぜに烏野コーチとドライブデートをしなければならないのですか⁈
「烏野、次試合じゃねーだろ?車貸してやっから。」
『私スーパーまで歩きますよ?』
私がそう言うと烏野コーチはスマホでスーパーを検索するとスマホの画面を私に見せてくる。
「スーパーまで軽く4、5キロあるぞ…?」
『まじすか…』
猫又監督は財布から万札を抜き、私に渡す。
「買い物ついでになんか上手いもん食ってきていいぞー。お駄賃だ。あ、領収書貰って来いよー。」
こうなった猫又監督は誰にも止められない…私は急に巻き込まれた烏野のコーチに向かって深々とお辞儀をする。
『なんかすいません…申し訳ないのですが、車出していただけますか?烏野の…』
「まぁ、言い出したら聞かねえ人だしな。つか堅苦しいのメンドクセーから繋心でいいぞー。」
俺、先生じゃねえし。そう言うと烏野のコーチ…もとい繋心さんは私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「じゃあ行くか?」
1回、調理室の中、ちゃんと見ておきたいな…そう思った私は繋心さんに話しかける。
『少し確認したいことがあるので先に行っててもらっていいですか。すぐに追いつきます。』
「じゃあ玄関で待ってるわ。」
そうして私と繋心さんはそれぞれ分かれ、昇降口に向かった。