第11章 月夜に啼く烏の声は
side月島
強引に奪ってしまえば自分のものになるんじゃないか。
自分のものにならなくても少しは心に入っていけるんじゃないか。
それがダメなら、自分の欲望のままに行動し逆にとことん嫌われて、彼女の視界に入らないようになった方がいい。
そのほうがきっと楽になれる。
そう思った。
でもダメだった。
彼女から他の男の名前が出た時苦しくてたまらなくなった。
彼女が選んだのは僕と正反対。
素直で人懐っこい。
そう、大型犬みたいなやつ。
天地がひっくり返っても僕はそうなれない。
それでも僕はきっとあの人の特別になりたかったんだ。
欲しくてたまらないものは僕の手をすり抜けて
捕まえることさえできなかった。
お願いだから、こんな僕のこと、嫌いになってくれ。
お願いだから。