第11章 月夜に啼く烏の声は
私は広いお風呂を1人で堪能したあと、お風呂を掃除した。
掃除が終わった頃には消灯まで30分を切っていて、さっき干した洗濯物の様子でも見てから帰ろうかなんて思いながらお風呂を出る。
『あれ?蛍?どうしたの?』
お風呂の前にあるベンチ。そこに座っていたのは蛍。
「あの人達…上がるって言ってんのに無理やり引き止めてきて…思いっきりのぼせました。」
その割には顔は火照ってはいない。治まってきたのかな。
『そっか。お疲れ様。じゃあ私部屋戻るよ。』
そういうと私は蛍から離れ、部屋に続く廊下へと足を踏み出した。
はずだった。
風呂上がりだというのに少しだけ冷えた蛍の体が私を包む。
『なにしてんの…』
「なんか面白くないなーって思いまして…」
『なにそれ…』
「僕、イチャイチャしてるカップルとか見ると気分悪くなるんですよね…滅茶苦茶にしてやりたくなるんですよ。」
耳元を蛍の声がくすぐる。
ククッと蛍が笑う。
私を抱きしめる蛍の腕の力は徐々に力強くなる。
「演技までして人払いしたんだから…それなりに楽しませてくれないと…ねぇ?」
そう言い蛍は窓ガラス越しに私を見て
ニヤリと嗤った。