第1章 わんことの出会い。
直井コーチに借りた鍵で備品倉庫の鍵を閉めている間に、男子バレー部はミーティングをして解散。帰ろうとするコーチに鍵を返しみんなが部室に着替えに行くのを確認。私は1人、戸締りなどの最後の点検をし、体育館から出た。
外に出るとまだまだ冷たい風が私の体を冷やし、カーディガンを教室に置いてきたことをちょっと後悔。急いでカーディガンを取りに教室まで戻り、靴箱へと歩いた。
内履きを脱ぎ、自分の下駄箱からローファーを取り出そうとすると外から…奇声?
「みゆさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあん!」
いや、リエーフが私を呼びながら部室棟がある方から走ってきた。
リエーフは玄関の前で勢いよく止まり、私に向かって近づいてくる。
「一緒に帰りましょう?」
『…いいよ?』
ローファーを下にぱふんと落とし、足を通す。そのまま歩き出そうとする私にリエーフは「ん!」って言いながら手を差し出した。
『繋がないよ?』
「なんで⁈」
私に手を繋ぐことを拒否されたリエーフはオーバーリアクションでびっくりしてる。
『リエーフと私はまだカレカノでもお友達でもなくてただの先輩後輩。』
「そうですけど…」
『ほら行くよ?…きっと待ってるから。』
そう言いながら私は、でもっ!と食い下がるリエーフのエナメルバッグのショルダー部分を持つと、ぐいっと引っ張り進む。
「待ってる?誰が?」
不思議そうに私の後をついてくるリエーフ。
そう。多分なにも言わなくても待ってるだろう。あいつらが。