第9章 追いかけっこ。
「かのじょ…なんですね。」
リエーフは嬉しそうに笑う。
『ねえ、私付き合うとか初めてなんだけど…付き合うって具体的に何するの?』
私がそう言うと、リエーフが少し考え、話す。
「手、繋いで登下校とか、一緒にお昼食べたりとか、部活に差し入れ…とか?2人で遊びに行ったりとか?」
『…全部やってるね?』
そりゃあみんなに付き合ってるって勘違いされるわけだ…
その事実になんだか笑えてきて私は笑う。それにつられてリエーフも笑い出した。
ひとしきり笑うとリエーフは壁に背中を預けて座り、私を足の間に座らせる。
「なんで俺、昨日から避けられてたんですか?」
う…説明しなきゃならない…?上手な答えを導き出せず、ため息を吐くとリエーフに向き直る。
『あー…聞いても笑わない?』
「笑いませんよ?」
『最初は昨日、バスから降りる時かな…あの時、リエーフ寝ぼけながら耳元でおはようって言ってくれたじゃない?』
「多分言ったような…」
覚えてないんかい。と、1人突っ込みを入れながら私は話を続ける。
『その時の寝起きの声?なんか…ね?どきどきしたっていうか…』
説明しながらどんどん声が小さくなっていく。
「それで?」
『あとね?昨日、自主練の時、私クロに担がれてたじゃない?』
「はい。」
『その時にリエーフに助けられたっていうか…』
「体育館の入り口で黒尾さんの肩から俺が降ろした時ですよね?」
『そう。あの時にこう……なんていうか…コップの表面張力みたいに溢れそうになってた想いがその時に溢れた…みたいな?』
「美優さん…なんかよくわかんない…」
うう…わかりやすく言ったつもりなんだけど…
「美優さんストレートに言ってください。」
『…恥ずかしいって…』
リエーフ…これ、言うまで黙ってるつもりだな…後ろから抱きしめられてるから逃げられないし…
私はふうう、と息を吐くと意を決して言葉を紡ぎ始めた。
『…昨日の自主練の時にリエーフが好きだって自覚したの。』
『好きって気持ちが溢れて止まらなくなったの。』
『他のこと考えられなくなるくらい。』
『リエーフが好きって』