第9章 追いかけっこ。
昼間使った調理室。スイカを切った時、あわてて外に出たので鍵をかけるのを忘れていたような…と思ってきてみたらビンゴ。鍵はかかっていなかった。ドアの内鍵を閉めた私は立ち上がりリエーフの所まで歩く。
「美優…さん?」
真っ暗で顔も見えない。
でも、声で
シルエットで、
香りで
わかる。
『リエーフ』
私はリエーフに後ろから抱きついた。広くて、おっきな背中。
「美優さん…」
『ごめんね?今日は避けちゃって。』
「いや…美優さんが大丈夫ならいいんです。」
腕に力を込めぎゅうと抱きつくと必死に後ろを向こうとするリエーフ。
「美優さん……あの、むね、当たってるんですけど…」
まあそりゃあ後ろから抱きついてるからね?胸、当たるよね?
『あててんの。』
「まあ、俺は嬉しい…じゃなくて!避けられたりくっつかれたり…俺、どうしたらいいかわかんないっす…」
だよね…
だって私もいまだにどうしたらいいかわからないもの。
『ねぇリエーフ?ちょっと座ってくれない?』
私の指示にリエーフは頷くと床に座る。私はリエーフの前に周り、膝立ちになると、正面からリエーフを抱きしめた。
「え?ちょっ!美優さん!」
『少し黙って…』
リエーフが静かになったことを確認し、私は1度深く息を吸って吐く。
『私、リエーフの事、すき。』
こくり、と息を呑む音。
『ずっと待たせてごめんね。すきよ?リエーフ』
そう言いリエーフをぎゅっと抱きしめると、リエーフが私の腰に腕を回し、ぎゅっと抱きしめる。
「これ…夢じゃないっすよね?」
『夢の方が素直かもよ』
私の答えを聞き小さく笑うリエーフのサラサラの髪の毛を撫でる。
「美優さん…俺、美優さんの顔見たい。」
『え?やだ!恥ずかしい!』
私の腰に回されていた手はいつの間にか私の手を取っていた。いつの間にか膝立ちになったリエーフに引き寄せられ、私の体は胸の中に収まっていた。嬉しそうに頬を緩ませるリエーフに観念して、胸に顔を埋めた。
『リエーフ、心臓すごい…』
「そりゃあすごいですよ。すきな人抱きしめてるんですから。」
驚き顔を上げた私に、リエーフは腕の力を緩め向かい合う。
「美優さん俺の彼女になってくれませんか?」
頬を赤く染め、ふりゃりと笑いながらリエーフは改めて私に問う。私はリエーフに抱きつき笑顔で答えた。