第9章 追いかけっこ。
side夜久
美優が体育館から出て行ったのを見送ると俺ははあ、と大きく息を吐き後ろを振り返った。
「…美優行ったぞ…」
そう声をかけると準備室から出てきたのは身長も態度もでかい後輩。ミスをして飛んで行ったボールを追いかけて入って行った準備室。そのタイミングで丁度美優が体育館に入ってきたんだけど…
いつまでたっても出て来ねえから、多分隠れてるんだろうなと嘘をついたけれど…美優にバレてねえよな…
「…夜久さんすんません…」
「さっきは美優が避けてて今度はお前かよ…」
いつものふてぶてしい態度はどこに行ったと思うような、しょぼんとした…まるで叱られて耳と尻尾をへたれさせた犬のような後輩に小さくため息をつくと、リエーフはぽつり、と言葉を落とした。
「…怖くて」
「…は?」
「さっきみたいに避けられんの怖いんすよ。」
体はでっけーし、いっつも態度もでっけーのに…なんで今日はこんななんだか…
「次美優が来ても今度は庇わねーからな。」
ビシッと指をさして言うと、リエーフは一度驚いたような顔をしたあとへにゃっと笑った。
「わかりました。じゃあ俺、美優さんから逃げるので!」
では!と言いながらリエーフはなぜか入り口の方に走る。
「おい!リエーフ!レシーブ練!」
「今日はキャンセルでー!」
そう言い逃げていくリエーフを見ながら明日はレシーブ練3倍だな、なんて考えながら思わず笑みを溢す。
ちゃんとどうにかなってくれよ。