第9章 追いかけっこ。
side黒尾
「いいんですか?行かせて。」
美優の背中を見送っているといつの間に近づいてきたのか赤葦が声をかけてきた。
「うおっ⁉︎赤葦‼︎」
「あれ、告白しにいくんでしょう?いいんですか?」
赤葦…こいつ本当に厄介だわ。
「ああ。俺は美優の"特別"にはなれない。そんなこととっくにわかってた。」
そんな話を聞きつけて木兎まで近づいてくる。
「何?黒尾傷心中?じゃあこーたろーちゃんが癒してやるよ。」
「ごつくてむさ苦しい男に慰められても嬉しくねえ。」
ネット越しに手を広げてハグをかまそうとする木兎とひとしきり笑いあうと急に挑戦的な目で俺を見る。
「じゃあ運動しよーぜ!動きゃー忘れられんじゃねーの?」
「お前みたいに単純にできてねーわ、俺。」
「褒めてんの⁈けなしてんの⁈」
「ん…どっちも?」
「あの…」
木兎とネット越しに笑いあっていれば聞き覚えのある声が聞こえ、入り口を見る。そこには昨日怒らせたはずの烏野のメガネ君が立っている。
面白そうなヤツが舞い込んできたな…
「おやおや?」
「おやおやおや?」
少しからかってやろうか。
うまく行ったら練習にでも付き合わせるか。
そう考えて声をかければ、メガネくんは何かを言いたそうに視線を彷徨わせ口をもごもごすると、ぽそり、と話し始めた。
「聞きたいことがあるんですが…」
そう言うメガネくんから話を聞きだすべく俺はニヤリと笑った。