第1章 コワレル
海常高校に入学して、間もなく、この高校にも慣れてきた頃。
「きゃーーー!!黄瀬クーン!!」
私の恋人、黄瀬涼太への声援が耳が壊れてしまいそうな程、体育館に響いていた。
今日は、帝光中の幻の6人目、黒子テツヤ君がいる誠凛との練習試合。
ドリブルする音、ボールがネットを潜る音、バッシュのスキール音も黄瀬君への声援で掻き消されていた。
私はその音...バスケが大好きなのに...。
「黄瀬君、頑張れ...」
恋人へのその声援も小さすぎて、届くはずもない。
黄瀬君と私は、同じ帝光中出身で、中3の春から、付き合っていた。
でも、それも、形だけで、キスすらしたことない。
私はカモフラージュ。
黄瀬君に言い寄ってくる女の子達への...。
だから浮気も何回もされた。...浮気になるかわからないけど...。
黄瀬君は私を、彼女とは思ってないんだから。
「あ...」
つい声が出てしまった。
黄瀬君が、黒子君に怪我をさせてしまったから。
大丈夫かな...黒子君...。
黄瀬君も結構、動揺してるみたい...。黄瀬君、黒子君のこと好きだからな...。
何度も浮気されても、私は黄瀬君を嫌いになれない。
......黄瀬君のことが好きすぎて、壊れてしまいそう。
すごい...ランガン勝負...。第1Qの時もすごい、ハイスピードだった。
あと1秒...。アリウープ...ブザービーター...。
すごい...、あの2人...。
誠凛のエース・火神君と黒子君のツーメンは本当にすごかった。
練習試合とはいえど、うちは強豪校。それにレギュラーメンバーにキセキの世代の黄瀬君もいるのに、100対98で負けた。
黄瀬君、泣いてる...。
胸が高鳴る。
泣いてる顔も笑ってる顔もアナタの全てが、私の鼓動を速める。
好き。
...どうしようもなく、積もっていくその想いが、私を壊していく。