第7章 月島蛍の誕生日
僕と夏乃さんが出会ってから10年、桜が生まれてから5年が経った。
その間、僕は就職し、夏乃さんは編集長一歩手前。
他のメンバーも就職し、みんなで集まる機会も減った。
だから撮影に誘われた時は嬉しかった。
だけど…
『ごめん。その日、出張なの…桜も美幸さん…義母さんが預かってくれるって。』
「そっか…」
僕も忙しくしてるし、たまには旅行がてら東京に行くのもいいかな。
そう思ったんだけど…
『たまには羽伸ばして来なよ。』
そう言いながら微笑む夏乃さん。
まあ、出張だからしょうがない…か。
ーーーーーー
「…ッキー?ツッキー?」
「あ、ごめん。何?」
「もうすぐ黒尾さんのとこ、着くよ?」
「わかった。」
交差点を曲がればバーはもうすぐ。
「タクシー代、経費で落としちゃうから降りて先行ってて?連絡はしてあるから。」
灰羽がそう言ってすぐくらいに車が止まり、扉が開く。
僕は今日の荷物を持ってドアの前に立つ。
このバーには桜が2歳の時から来れていない。
懐かしいな…
そう思いながらドアを開けた。
からんからんっ
ドアベルが鳴り、中に入ろうとしたその時だった。