第1章 減らない料理
「もー、そんなんじゃ結婚してあげないよー?」
「え、それは困るよ!」
焦る湊が可愛くて、クスクスと笑ってしまった。
私と湊の出会いは、高校3年生の春。
同じクラスになった私達は、まるで生まれる前から出会うことが決まっていたかのようにお互いに一目惚れしたのだ。
運命の赤い糸、なんて言葉があるが、私と湊はまさにその糸で結ばれていたように、当たり前のように付き合い始め、一度も喧嘩をすることなく6年の月日が流れた。
「シュリ、そろそろ結婚しよっか。」
ロマンもムードも無いプロポーズだったが、湊らしいと思った。
「うん、結婚する!」
迷う理由などなく、私は即答した。
これが、3週間程前の話だ。
「ねぇ湊、食べないのー?」
そう促すが、湊は苦笑いをするだけ。
「もー、勿体ないなぁ…。何か悩みでもあるの?あるなら話して?」
湊は微笑みながら「大丈夫だよ。」と言った。
その後も湊はパスタにも飲み物にも一切口を付けなかった。
「湊、帰る?」
そう尋ねると、湊は申し訳なさそうに頷いた。