第1章 減らない料理
大都会の大通りにあるパスタ屋さんは、私と彼のお気に入りのお店だ。
私は日替わりで色々なパスタを食べるが、彼はいつもカルボナーラしか食べない。
「タラコのパスタとカルボナーラ、アイスティーとアイスコーヒー、お待たせ致しました。」
「ありがとうございます。」
今日は天気が良いからテラス席で食べることにした。
私は日替わりメニューのタラコのパスタとアイスティー、彼はいつもと同じ、カルボナーラとアイスコーヒーだ。
店員さんが去り際に不思議そうな顔をした気がしたが、然程気にせずに彼に話しかけた。
「湊はホントにカルボナーラ好きだよねぇ。飽きないの?」
向かいの席に座る彼氏、七原湊は私の言葉に笑って頷いた。
「カルボナーラはいくら食べても飽きないから。」
「じゃあ、一緒に住んだら毎日作ってあげるよ。いただきまーす!」
私はスプーンとフォークを使ってパスタを食べた。
時折アイスティーを口にし、お腹が空いていたこともありあっという間に完食した。
湊はまだ、パスタにもアイスコーヒーにも口を付けていない。
「湊、食べないの?」
そう問いかけると、湊は苦笑いをした。
「もー、最近食欲無いけどどうしちゃったの?」
少し前から湊の様子がおかしくなった。
食事や飲み物に一切手を付けなくなったのだ。