【イケメン戦国】 色に出りけりわが恋は <R18>
第3章 ~紅唇~
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佐助が立ち去ったのを確認してから、謙信が向かう先。
謙信「なお」
声を掛けると、ちょっとごめんね、と女中達に断わり、謙信に駆け寄る。
「謙信様、こんにちは」
無邪気な笑顔を見せるなお。
暇を見つけては城の掃除を率先して行い、女中達と一緒になって雑用をこなすなおが、嫌いではなかった。
謙信「忙しいところ悪いが、一つ頼まれてくれるか」
一冊の本をなおに手渡す。
謙信「すぐに返しておかなくてはならないのだが、書庫まで行く時間がない。なお、行ってくれるか」
「あ、でしたらこの前仰ってた・・・」
謙信「構わん。好きにしろ」
歴史書が読みたいと相談したところ、自分の書庫を自由に使っていいと謙信が許し、だが行く機会が中々無かった。
「ありがとうございます!」
謙信「いや、礼を言うのは、頼み事をした俺の方だろう」
ふっと表情を和らげる謙信に、
(あ、今、笑った?)
少し驚くなおだった。
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書庫の中は薄暗く、謙信に指示された通り、本を戻すべく一番奥の棚を確認する。
本が一冊抜けている場所・・・あった。
一番上の段は背伸びをしてもギリギリ届かない。
窓の重厚な扉は閉ざされ、隙間から漏れる僅かな光を頼りに、踏み台は無いかと辺りを探る。
ふと人の来る気配を感じ、入口の方に目をやると、逆光の中に黒い影が現れる。
(?)
影が躓くように入り込んできたかと思うと、入口の扉が勢いよく閉められた。
その扉が、今度はガタガタと音を立てて揺れる。
「だれ?!」
暗闇の中、不安の混じった声で呼びかける。
佐助「なおさん?」
その声を聴いた途端、ほっと胸をなで下ろす。
「佐助君! どうしたの?」
微かな光を頼りに、入口の方へと移動する。
佐助「俺にもよくわからないが・・・ドアが開かない」
「えっ!?」