【イケメン戦国】 色に出りけりわが恋は <R18>
第3章 ~紅唇~
謙信が佐助を見据える。
謙信「ご苦労だった」
隣国へ偵察に行っていた佐助が、謙信への報告を終え、頭を下げる。
謙信「まだ何か用か」
一向に下がろうとしない佐助に声を掛けた。
射抜くような冷たい眼差しに怯む様子もなく、
佐助「部下の悩みを聞くことも、良い上司の条件かと」
謙信「は?」
居住まいを正すと、思い切って悩みを打ち明ける。
謙信「その散漫な態度の訳は、そんな事か」
くだらん、と言いたげな表情。
途端に、後悔の念に駆られる。
佐助「申し訳ありません、今の話は忘れてください」
背中を向け、部屋を去ろうとする佐助に、
謙信「待て」
いつもと変わらぬ声で謙信が呼び止めると、
謙信「書庫へ行け」
佐助「え・・・」
謙信「確か奥の方の書棚で、色恋に関する指南書を見かけた」
謙信は筆を取ると、紙の上に走らせる。
謙信「ついでに、ここを出たら信玄の部屋にこれを届けろ」
一通の文を佐助に手渡した。
謙信「先程の報告を信玄にも伝え、話し合いの場を設ける」
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信玄「なるほど」
文を畳むと、
信玄「確かに受け取った。ご苦労」
佐助に尋ねる。
信玄「ところで、気もそぞろといった様子だが、何かあったか?」
まさか信玄にまで相談するわけには・・・
佐助「いえ、何でも。俺はこれで失礼します」
部屋を出て行く佐助を追いかけるように、信玄が後に続く。
佐助「信玄様、どちらへ?」
信玄「書庫だ。明日の軍議に必要な書があってな」
佐助(バッドタイミングだ)
二人は共に書庫へと向かう。
扉を開けようと佐助が手を伸ばすと、
信玄「佐助、肩に何か付いている」
佐助「え?」
顔を横に向けた瞬間、信玄の手が眼鏡を奪った。
佐助「っ!? 信玄様?何を・・・」
---ドンッ
背中から突き飛ばされ、前のめりになりながら佐助が書庫へ入ると、
信玄「ごゆっくり」
妖艶な笑みを見せ、信玄が扉を閉める。
佐助「!」
慌てて扉を開こうとするが、外に支えがあるようで、ガタガタと揺れるだけで開かない。
佐助(どういうことだ)
「だれ?」
佐助「!?」
その声に、咄嗟に振り返り、暗がりに目を細める。
佐助「なお、さん?」