【イケメン戦国】 色に出りけりわが恋は <R18>
第3章 ~紅唇~
佐助「なおさん、今いい?」
その声になおが上を見上げる。
「どうぞ!」
天井の板が一枚外れ、ひらりと忍者が飛び降りる。
「普通に入り口から入ればいいのに」
可笑しそうに微笑む。
佐助「職業病だ」
なおの傍に腰を下ろす。
「もうすぐ終わるよ、待っててね」
縫い物を広げて見せるなおに、
佐助「いや、催促に来たわけじゃない」
佐助も微笑み返した。
今朝顔を合わせた時、佐助の装束にほころびを見つけ、なおが直しを買って出てたのだが、預かってよく見ればあちらこちらが傷んでいた。
せっせと繕うなおに、熱い視線を向けてみる。
佐助「・・・」
「・・・」
佐助「・・・ ・・・」
気配を消す修行はしたが、こちらに意識を向けさせる術はまだ体得していなかった。
痺れを切らし、声を掛ける。
佐助「なおさん」
「ん?」
顔を上げたなおと、漸く目が合う。
佐助「・・・」
「なぁに?」
佐助(これは、いけるのか? どっちだ)
暫く見詰め合っていると、
「佐助君・・・」
なおがゆっくりと顔を寄せる。
佐助(これは・・・“いける”かな)
佐助が前に姿勢を傾けると、
「これ、何のシミ?」
なおが肩の辺りに目を向ける。
佐助「あ、・・・幸村のお茶」
天井の板を元に戻すと、姿勢を低くし天井裏を走る。
佐助(やっぱり幸村じゃダメだ。他を当たろう)
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佐助が部屋を出た後、なおはへなへなと畳に崩れる。
「き、緊張した・・・」
胸の音が煩いくらいに耳に響く。
(さっき、絶対チャンスだったのにっ!私のバカっ)
こちらを見つめる佐助に、吸い寄せられるように身を乗り出し、その唇に・・・
「わわわ・・・!だめだめっ」
思い出し、顔を赤らめ悶絶する。
好きな相手なのだから、キスしたいと思うのは自然な事なのに、そう分かっているのに、
「佐助君・・・」
彼は、したいとか、思わないのかな?
表情からは決して読めない佐助の深層。
ポーカーフェイスにも程がある。
佐助の装束を抱き締め、そっと唇を当て、目を閉じる。