第10章 Fate/Zero...? 英霊召喚
「そうだよ。君は、私のサーヴァント」
すると、私のサーヴァントとなった「彼」――英霊エミヤは、満足げに口の端をつりあげる。そして、おもむろに、ソファから腰をあげ、私の正面に立った。
身長差の関係で、私が自然と見あげるように顔をあげれば、同じように、下を向いてこちらを見おろしていた鉄色の瞳と目が合う。
けれど、そこにあったのは、私たちが“初めて”会ったときよりも、ずっと、やわらかい――懐かしさと、たしかな親愛の情が宿る瞳。知らず、私の目も細くなる。
「エミヤシロウは、相変わらず大きいねえ」
「君は、ずいぶんと小さくなったな■」
そんな他愛のないやり取りさえも、懐かしくて、あたたかくて――この全てを失いたくないと、強く思う。
「ここからが、本番なんだ。力を貸してくれる?」
ちょっと小首を傾けて問うた私に、彼は――シロウは、また不敵な笑みを浮かべる。
「当然だ――それとも何かね? 私は君にとって、それほどまで信用がないとでも?」
「まさか。信頼してるから、君を呼んだんだよ」
両手を後ろで組んで笑い――そうして、私は、用意しておいた箒とちりとりを、シロウに突きつけた。
「じゃ、とりあえず、お掃除よろしく」
シロウ召喚のため、ある程度の片づけをしたとはいえ、所詮そこは子どもの身体。倉庫代わりにされていた地下室の半分以上は、未だゴミの山である。ちょっとでも私がふれようものならば、崩れてきたゴミで生き埋めになること請け合いだ。
そんなこんなで、にこやかに箒とちりとりを押しつけようとする私に対し、当然というべきか、シロウは憮然とした表情になる。