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Fate/IF

第10章 Fate/Zero...? 英霊召喚



 その夜、私は、サーヴァントを召喚するために、誰もいない廃屋の地下室に立った。
 サーヴァントの召喚なんて、したことはない。ましてや、私は、冬木の聖杯に選ばれ、令呪を与えられたわけでもない。
 ――それなのに、まるで失敗する気がしないのは、なぜだろう。
 経験はいらない、令呪もいらない、触媒となる聖遺物さえもいらない――ただ、私が望めば、英霊は応える。それが、当たり前のようにさえ、感じる。
 それがどうしてなのかは、“まだ”、わからない。ただ、確かなのは、私がそういう“存在”になったのだということだけ。

 私はゆっくりとまぶたをおろし、語りかけるべき英霊がいるだろう英霊の座を意識する。
 とたん、まぶたの裏に鮮明に浮かびあがる景色があった。
 地平線の彼方まで広がる荒野――大地に突き刺さる無数の剣は、まるで墓標のようだった。そして、その剣の丘に、「彼」は一人で立ち尽くしている。
 ――ひどく、懐かしい姿だった。
「冬木の地に根づく聖杯戦争のシステムをもとに、ここに新たな聖杯戦争のシステムを築く。名立たる英霊のコピーを現界させ、マスターとサーヴァントとしての契約を成立させる――これに応える意思があるのなら、それを示して」
 私は、呪文でもなんでもない「言葉」を、ただ紡いだ。
「――英霊エミヤ」
 その名を呼べば、剣の丘に立つ赤い人影が――英霊エミヤが、顔をあげる。

『――ようやく、来たか』

 呟いて、口もとに笑みを浮かべると同時、地下室に光と魔力があふれ出す。
 それらを軽くいなしながら、私は光と魔力が生み出す奔流の中心に現れた人影へと、目を向けた。地下室に置いてあった赤いソファーに、ふんぞり返る「彼」が、私を見つめて不敵に笑う。
「問おう、君が私のマスターかね?」
 私は、その問いかけに対し、笑顔で応じた。
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