第10章 Fate/Zero...? 英霊召喚
「……■、君は私をなんだと」
「サーヴァントって、使い魔みたいなものなんだよね!」
一度、言ってみたかった名台詞。
私が嬉々として言い放てば、シロウはやがて諦めたように、ため息を吐いた。シロウは私の手から、箒とちりとりを受け取ったかと思うと、すぐに掃除に取りかかろうとして――
「あれ? 何も言わないの?」
思わず、拍子抜けしてしまい、シロウを呼び止めるように問いかけたら、彼は怪訝そうに振り返った。
「? 何をだ」
「“了解した。地獄に落ちろ、マスター”とか」
彼の名台詞。本音を言うと、これが返ってくるのを期待していたのだけれど、シロウはその台詞を口にはしなかった。
彼にとって、召喚されて早々に掃除を指示されるのは、“二度目”だからだろうか――そう内心で首をかしげる私とは反対に、シロウは“かつて”自分の言った言葉が、そっくりそのまま、私の口から出てきたことに驚いたようだった。
「なぜ、君がそれを」
と、そう言いかけて、はたと我に返ったように、首を振る。
「――いや、いい。君は、知っていたんだったな」
そう納得して、シロウは再び私に背を向けた。
そして、
「冗談だとしても、君にだけは言えんよ――私はそれを、望まないからな」
困ったような、そんな微かな笑みを浮かべて肩越しに私を振り返った彼は、そう言って、地下室の暗がりに消えていく。
「……なに、今の殺し文句……」
ぼそりと呟いた私の言葉に、返る答えはなかった。