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Fate/IF

第9章 Fate/Zero...? やがて、拠点となる廃屋で



 龍之介に運ばれるような形で、地下室へ入った私は、そこで、思わず、声をもらした。 
「うわあ……かなり、散らかってるね……」
 たぶん、倉庫として使われていたんだろう。地下室には、家具やら何やらが、無造作に置かれている――なんというか、今にも、黒光りする家庭害虫が出てきそうだ。
「……龍之介にしてみれば、これもある種の芸術?」
「■は、俺の芸術作品を、なんだと思ってるんだよ……こんな部屋と一緒にしないでほしいんだけど」
 正直なところ、私としては龍之介の「芸術」と比べたら、この地下室のほうが、よっぽどいい。
 なにしろ、“昔”よりは、よくなったとはいえ、今の龍之介の芸術といったら――
「あれ、そういえば龍之介、精肉店のアルバイトは?」
 ふと、思い出して、私が龍之介に尋ねると、彼は一瞬だけ目をぱちくりとさせ、それから、慌てたように腕時計へと目を落とした。
「やっば! 急がないと、俺の創作時間が始まるじゃん……!」
 精肉店でのアルバイト――それを「創作時間」と言いきってしまうあたり、さすが龍之介だなと思ってしまう。
 人殺しをしないようになった龍之介は、いつからか、精肉店で働くようになっていた。いわく、
「すでに解体された肉を、どんな芸術作品にして、いかに芸術的にディスプレイするか――それを考えるのが、いいんだよ!」
 ――らしい。
 相変わらず、私には理解できない趣味だけれど、「過去の未来」でのことを考えると、これはものすごい前進だと思う。
 もっとも、本人に自覚はないうえに、今はそれどころではないようだけれど。
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