第9章 Fate/Zero...? やがて、拠点となる廃屋で
「まあまあ、別に、そんなことどうだっていいじゃん。それより、どう? この廃屋!」
鮮やかな手さばきによるピッキングを「そんなこと」で片づけ、大げさに手で廃屋の中を示す。
廃屋の中は薄暗かったけれど、鍵がかけられていたおかげか、荒れてはいない。置き去りにされたのだろうか、少しばかりの家具があるだけだった。
「地下室と屋根裏部屋もあるんだってさ! あの旦那を地下室で召喚するとか、最高にcoolだと思わねえ!?」
「ああ、うん、coolかどうかはともかくとして、サーヴァントの召喚とかをするには、地下室は、ちょうどいいかもね」
「だろ!?」
若干棒読み気味に返す私に気づいているのか、いないのか。龍之介は、目を輝かせて、私を見た。
「やっぱさ、まずは地下室だよな! 旦那を召喚するときは、俺も一緒にいていいんだろ? 地下室の内装、どんな風にしたら、旦那は喜んでくれるかなあ……!」
「……とりあえず、血とか臓物で飾るのだけは、やめてね」
――たぶん、召喚以前に、私が吐くから。
「えー?」
とかなんとか言いながらも、龍之介は私を抱きあげたまま、地下室へと向かう。
いい加減、降ろしてほしい気もするのだけれど、龍之介は、妙に私とのスキンシップを好むから、私が言うだけ無駄だろうなと、そこはあきらめた。