第9章 Fate/Zero...? やがて、拠点となる廃屋で
そうして、連れてこられたのは、ぱっと見では、寮とは思えないくらいに、しゃれた洋館風の廃屋。とはいえ、今は使われていないがために、庭には草が生い茂り、壁にも蔦が這っている――建物のしゃれた造りが、逆に、不気味さをかもしだしているような気がした。
龍之介は、私を抱えたまま、屋敷の扉の前に立つと、鍵を開けてさっさと中に入りこむ。その様子に、私は思わず、首をかしげた。
「あれ、龍之介、鍵なんて持ってたの?」
「――鍵?」
私が問いかけたら、なぜか龍之介まで、首をかしげる。
それがちょっと予想外で、私は、さらに首をかしげた。なんだろう、この反応は。
けれども、龍之介のほうは合点がいったらしい。すぐに、無邪気な笑みを浮かべた。
「ああ、違う違う。今の、ピッキングだから」
「え」
「ほら、これ」
言うや否や、ぽかんとする私に向かって手をひらひらとさせながら、龍之介は、先端が歪んだ細長い金属の棒を見せてくる。
「殺しをやらなくなってから、必要がなくて、ずっとやってなかったんだけどさ、意外と、身体ってのは覚えてるもんなんだなー。俺、感心しちゃったよ」
「いや、それ微妙に違う。身体は別に覚えてないから。龍之介に返還された“記憶”の中での経験だから」
思わず、ツッコんだ私に対して、けれども、龍之介は大して気に留めちゃいなかった。