第32章 turning point~転機~
「何でそんなこと言ったんだよ!」
「だって、大野さん最近全然絵も描いてないし、なんか作ってるっていうのも聞かないから…
勿体ないな~、って。そう思って翔ちゃんに…」
「関係ないだろ!!俺が何していようが!そんなのニノにはどうでもいい事じゃん!大きなお世話だよ!」
俺は、あれ以来溜まっていたモヤモヤした気持ちを、ついニノにぶつけてしまった。
でもニノは、いつもののんびりした口調で、
「俺は描いて欲しいのよ~。俺には関係ないって…そう言うけど。俺は、大野さんの描く絵や、作る作品のファンだからさ。
また見たいな~って…そう思うんだよ」
「…ニノ……」
「きっとね。ファンの子たちはもちろんだけど~?
翔ちゃんも…」
「翔…ちゃんも…?」
「そ。翔ちゃんはいつも、あなたの作品を自慢していたからさ。
『凄いだろう~』『天才だよな』って…
凄く得意げな顔してね…」
「………」
だから悔しかったんだと思う。
俺が絵を描かなくなっていたことに、気付いていなかったことが…
自分で自分を責めていたんじゃないか…
だからこそ、解放してやろうって…
そう思ったんだと思う…
また俺が、絵を描きたいって、そう思えるような…そんな時間を過ごせるように…って…
ニノは、淡々とそう話した。