第32章 turning point~転機~
ニノの後について、さっさと部屋を出ても、残っている三人は何も言っては来なかった。
翔ちゃんも……
俺が帰るのを、チラッと見たけど、また直ぐスタッフや松潤と打ち合わせの続き始めてしまった。
同じ家に帰るからといっても、毎回一緒な訳じゃないからね…当然なんだけど…
いつものことだけど…
いつものことなのに…
なんだか今日は、
ほんの少しだけ、胸の奥がチクンと痛んだ。
マネージャーに送って貰って着いたのは、打ち合わせやリハーサルの帰りには時々寄っている店。
他のお客さんと顔を合わせることが少ないのがいいんだ。気にしなくていいからね~
「ビールでいい?」
「うん…」
ニノが、パネルで適当にオーダーする指先を、
ぼんやりと見ていた。
「…ん?何?」
「え?…ああ、相変わらず可愛い手だな…って思って」
「それだけが取り柄なんで♪」
そう言ってニノは手のひらをひらひらと振って見せた。
「…そんなことないよ…」
「ん?」
そうだよ。
可愛い手だけが取り柄なんて…
ニノは海外でも通用する、抜群の演技力があるじゃん。
映画やる度に絶賛されるくらい…
それは、『嵐』じゃなかったとしても、きっと…
………
……『嵐じゃなくっても』…
そう思った自分に、一瞬背筋が寒くなった
……例えでも、そんなこと思っちゃいけない。
嵐じゃなくなったら、俺たちは…少なくとも俺は、何者でもなくなってしまう…
「で?話ってなによ?」
2杯目のビールを煽ってから、ニノが切り込んできた。