第30章 蜩〜ひぐらし〜
毎日毎日考えた
智の顔を見ながら…
智の声を聞きながら…
智のこと
俺のこと
嵐のこと
俺と智だけじゃない
『嵐』としての俺たちの未来……
そして…
俺はたどり着いた
ひとつの結論に
今の俺たちふたりと、
俺たち5人に
俺が……
俺なりに悩んで、考えて、
そして出した答え…
何もかもこれからだ…
18年一緒にやってきた仲間に
俺の正直な気持ちを伝える
それは凄く、凄く勇気のいることだ
でも……
あいつらなら、きっと分かってくれる
分かってくれて、
その上で、
どうしたらいいのか、
俺たちの進んでいく方法を、真剣に模索してくれる
智は……
智は、どう思うんだろう…
智……
「お疲れ様でした~」
「お疲れっした~」
ずっと連載をやらしてもらっている、
雑誌の取材が終り、東京に帰る
夕方にはマンションに戻れるだろう。
智が釣って来たって言うカツオの写メが送られて来たから、食卓には新鮮なそれが並んでいるんだろうな…
駐車場までの道のり…
足元で白い砂利が規則的な音を刻む
ふと立ち止まり空を見上げると
青い空に、入道雲が上へ上へと伸びていくのが見えた
汗ばむ頬を撫でる風は
秋の気配を微かに孕んでいる…
「もう、夏も終わるんだな…」
眩しさに手をかざした俺の耳に
去りゆく夏を惜しむかのような蜩の鳴き声が届いた。
夕暮れ前のわずかな時間
小さな身体で精一杯に泣く蝉…
「櫻井さ~ん!行きますよ~!新幹線に遅れま〜す!」
一気に現実か…(^^;
「今行く~!」
俺は、砂利を蹴って走り出した