第29章 君と紡ぐ時間
「俺…男だし。
翔ちゃんにそっくりの可愛い子ども、産んでやれないし。
だから、当たり前のことだけど、翔ちゃんのお父さんとお母さんにも、孫、見せることできない…
正式に婚姻届けも出せないし。
ファンのみんなにも報告できない…」
「…さとし…」
「でもね…」
智は、少し離れてから俺の頬を両手で包んで、
じっと見つめた。
今にも涙が零れそうな目で…
「…泣くなや~…(^-^;」
堪らずに、ふわふわの髪をなでると、
彼の目から、大粒の涙が零れ落ちた。
「俺が、翔ちゃんでなきゃダメだからさ。
翔ちゃんとでなきゃ、幸せになれないから…
…うんん…もう、翔ちゃんの隣でなきゃ俺、
生きてけないから…」
……さとし……
彼の言葉が、俺の心の奥の、
一番深いところにじんわりと広がる…
親に申し訳ないって思ってるのも、
この頃は何も言わなくなったから、割り切れたんだって思ってたけど…
そうじゃなかったんだな~…
「…翔ちゃん…愛してるよ…
何もいらないから…俺の全部を取られてしまっても…翔ちゃんがいればさ…それで俺、幸せだから!」
言い切ったな~(^^;
泣きながら…
今更な感じでもある愛の告白を聞いて、
俺はそのまま、彼の身体を抱き寄せた。
「智…愛してる…
俺だって、お前がいれば、何もいらない…」
「…しょお…ちゃん…」
大粒の涙が頬を伝うのを見ながら、
そっと睫毛を伏せたその唇に自分のを重ねた。